最近、山里の柿の木がクマが出没するというので伐採されているのが話題になっています。
昔は農家の軒先にはどこにもいろんな種類の柿の木があり、子供たちの秋のごちそうでした。柿どろぼうをした経験のある子供達も今は80歳くらいでしょう?
平野部の農家でもほとんど伐採されて少なくなりました。理由は毛虫(アメリカシロヒトリ、イラガ)がつく。子供が食べない。実が朽ちて落ちると汚い等々で。
私の屋敷にはかろうじてまだ残っています。祖父が植えた70年経過の平核無柿(ヒラタネガキ、渋柿)の大木と母が植えた40年経過のシロチチ(不完全甘柿)で、私はこの柿を大いに利用しています。
『 柿が赤くなると医者が青くなる』は諺だけの世界に成りつつあり、寂しい限りです。
柿渋の利用
お盆の頃の平核無柿を潰して、水に浸し2年くらい発酵させます。
①柿渋染め➡柿渋で染めた木綿の「肌触りの良さ」は、**繊維の「ハリ・コシ」と「肌離れの良さ(速乾性)」**が組み合わさって生まれる感覚で、夏の農作業には必須アイテムです。
また、子供頃魚とりの網(木綿)を買うとすぐに柿渋で染めて使っていました。網が強くて水はじきがいいのを覚えています。
②木の防腐剤➡昔は木造建築しかありませんから、食用の柿より防腐剤としての利用が多かったようです。私は外の木のテーブルに柿渋を塗っていました。
柿渋が木材の防腐剤として優れているのは、単に表面をコーティングするだけでなく、抗菌・防虫・防水・UV防御という複数の化学的・物理的効果を、主成分であるタンニン一つで達成できるためです。


さわし柿、干し柿
さわし柿➡毎年、平核無柿を大量に焼酎をヘタに浸けて渋抜きします。東京の友人はドライアイス(炭酸ガス)で渋抜きしています。水に溶けていたタンニンが不溶化して甘くなる。
①焼酎付けの渋抜きのメカニズム➡ 糖→アルコール→アセトアルデヒド(不溶性になるのは、このシブオールが、アセトアルデヒド と結合し、さらに大きな分子(高分子複合体)に凝固(重合)するためです。詳細は結構複雑な化学反応です。
②炭酸ガスの渋抜きのメカニズム➡ 柿を高濃度の二酸化炭素環境下に置くことで、柿自身に嫌気呼吸を強制させ、アセトアルデヒドを大量に作らせる方法です。
酒に弱い私はこのアセトアルデヒドで頭痛を引き起こしますが、ここではいい仕事をしてくれているようです。お酒を飲む前に柿を食べると悪酔いしないというのもアセトアルデヒドを柿タンニンとくっつけて消滅させるようです。
干し柿➡新潟県の初冬は湿度が高くカビにやれるので、東京でつくって貰っています。(新潟でも寒風がよく当たる場所はOKです。)
干し柿が甘くなるメカニズム➡ 皮を剥いて干すと、果実の表面に酸化した膜ができ、内部が一時的に低酸素(酸欠)状態になります。嫌気呼吸することで、果肉の中にアセトアルデヒドが生成されます。炭酸ガスの渋抜きと同じ嫌気呼吸を利用するのです。


柿酢
柿も大量になるので、今年から柿酢をつくることにしました。とても簡単でヘタを取った柿を壺にドンドン入れて、時々潰してやると1か月くらいできれいな柿汁が出来上がります。これを絞って出来上がりです。柿酢の効能はスーパードリンクです。
柿酢のメカニズム➡柿の皮についている酵母が糖分をアルコール発酵させます。そして酢酸菌がアルコールを酢酸に変えます。(葡萄の葡萄酒、ワインビネガーと同じようです。)


昔の人は自分の食するものは手間暇かけてつくっていました。暇な老人だけでなく、若い人も手間暇かける時間が持てるようなAI時代になるといいですね。



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